第11回LSIデザインコンテストin沖縄2008

             

琉球大学 工学部 情報工学科 教授

ファイヤー和田 知久

1.はじめに

  「LSIデザインコンテストin沖縄」も、今回で11年目を迎えることになりました。1998年に第一回のLSIデザインコンテストが開始された時は、琉球大学工学部情報工学科内部での学生コンテストでしたが、回を重ねるごとに、学外、国外と参加者の枠が広がりました。このコンテストの特徴として、資金はすべて企業や公共団体からのご寄付でまかなわれており、長年の間サポートして頂いた企業・団体の方々には大変感謝しております。今回より電子情報通信学会スマートインフォメディア研究会の共催を頂き、また多数の協賛企業に参加頂き優勝・準優勝の副賞で大変お世話になり、入賞学生達にとってメリット大きいコンテストになりました。

2.第11回の設計テーマ               
  電子メールや電子ファイルの暗号化に用いられるRSA暗号の暗号化・復号化回路の設計です。1977年に発明され、発明者であるロナルド・リベスト(Ron Rivest)、アディ・シャミア(Adi Shamir)、レオナルド・エーデルマン(Len Adleman) の頭文字をつなげてこのように呼ばれています。RSA暗号は桁数が大きい整数の素因数分解問題が困難であることを利用して、安全性を保障している暗号で、大きな桁数の整数演算が必要となります。RSAの暗号化・復号化計算は対象(同じ演算)であり、暗号鍵と復号鍵は異なるものですが、同一の指数乗演算とmod演算の組み合わせの演算となります。以下の式(1)は平分Pを暗号化鍵E、Mを用いて暗号Cを計算する式です。復号の場合は、全く同じ式で、Pの部分に暗号Cをそして、別の鍵を用いる計算となります。

  演算として一見単純に見えますが、指数乗の計算のために、計算機では簡単に取り扱えない大数があり、計算には特別な工夫が必要となります。               
                 
3.学生部門の総評               
  2008年3月14日、沖縄県那覇空港近くの沖縄産業支援センター1F大ホールにて、「第11回LSIデザインコンテストin沖縄2008」コンテストの発表会・最終審査会を開催しました。本コンテストは学生対象にハードウエア記述言語用いた半導体集積回路(LSI)の設計を行うコンテストです。決められた共通課題に従いつつ、ある程度の自由度を持ちながらオリジナリティのある集積回路を設計することを特徴としており、共通設計課題をターゲットに設計内容を争うという意味では国内唯一の設計コンテストです。また、課題もなるべく現実的でかつその時節にホットな設計課題を初心者学生でも対応できるように工夫がされています。                   
  コンテストは今年度が11回目で、コンテスト発表会の前に九州組込みソフトウエアコンソーシアム(QUEST)・ネットワーク応用技術研究所 芦原 秀一氏より「アジアの中の九州における組込みシステムビジネス」並びに、名古屋大学 附属組込みシステム研究センター研究員・組込みソフトウエア技術者人材養成プログラム(NEXCESS) 山本 雅基氏より「組込みソフトウエア技術者人材養成から始める自動車産業」という2件の基調講演と、「沖縄のソフトウエア企業が組込みシステムビジネスに参入可能か?」というテーマでのフォーラムをあわせて開催しました。ホームページ[1]によるデザインコンテストの告知と、本誌設計コンテストと協力し、沖縄県内32名、沖縄県以外の国内17名、海外23名、あわせて33チーム・72名の学生の参加がありました。参加団体は神戸大学、芝浦工業大学、東海大学、法政大学、豊橋技術科学大学、長崎大学、大分県立工科短期大学校、千葉大学、国立沖縄工業高等専門学校、広島大学、より、そして国外よりバンドン工科大学(インドネシア)、南西大学(中国)、朝鮮大学(韓国)です。事前選考の結果、国外の3チームを含む9チームの代表者を沖縄に招待し、琉球大学の2チーム、そして社会人の優勝チーム1チームとあわせて計12チームによる発表会を行いました。図1にこれまで11年間の参加学生数の推移を示します。ここ数年は100名前後でしたが、本年度は課題がやや困難であったようで県内学生と海外学生からの応募がやや減少していました。                  

図1  過去のLSIコンテストの参加学生数